ごあいさつ
2014年3月、57歳の時に私は肺X線検査で要精検になり、国立系の病院で非結核性抗酸菌症の疑いがあると診断されました。その後、2017年1月の喀痰検査で、私の肺に悪さしたのは肺マック菌ではなく、肺アブセッサス菌であることがわかりました。非結核性抗酸菌症≒肺マック症なので、比較的珍しい菌にやられたということになります。
その頃から都内のクリニックで漢方薬によって免疫力などの向上を図り、定期的に検査をして要観察状態が続いていたのですが、2023年夏、軽い肺炎にかかったことがきっかけとなり、肺に空洞化病変が出現。2023年12月19日から2週間入院して抗生剤の点滴治療を受けました。退院後は2024年1月4日から8日間、毎日2剤の点滴(病院の都合により土日は休み)、その後は週2回、1剤の点滴を行い、現在に至っています。
2月15日に撮った肺X線画像は、要観察と言われた2023年5月11日より良くなりました。また喀痰検査も入院後一週間目に既にマイナス(-)になりました。3月15日に別病院で受けた人間ドックでも肺機能検査の結果はAでした。
近年、中高年の女性の間で非結核性抗酸菌症に罹患する人が増えているそうです。
患者の共通点としてやせ型というのがあります。私もやせ型です。身長159cm、出産の時期を除き、体重は20代の頃からまったくかわらず48kg台。変わらないというよりも変えないようにしてきました。高血圧、糖尿病といった、いわゆる生活習慣病も何もありません。もし私がふくよかだったらかかっていないかもしれないと思うと、複雑な気持ちになります。
非結核性抗酸菌症とは悔しい病気です。
難治性の病気なのに、悪化してもすぐに死ぬわけではない。
たまに病気が進行しない人もいる。
しかし、進行すれば確実に肺環境をむしばんでいく。あなたの余命は後何年…と言われる。
確実に効く薬=抗生剤がない。
いざ抗生剤による治療をすると、長い期間にわたって抗生物質漬けになる。
一般的に抗生剤って、必要以上飲むなと言われてませんか? なのに、耐性が生じないように複数剤を何年も服用しなければならない患者もいます。
そして、菌が排出されなくなっても、いつまた再発するかわからない。
病院の呼吸器内科医たちは抗生剤をどのように組み合わせると治療効果が出るかにしか関心がない。少なくとも私にはそう見えます。
私の場合、夏の肺炎罹患からしばらく咳が酷かったですが、12月の入院時には、咳や痰の症状はほとんどありませんでした。画像上は良くないけれど、自覚症状は大したことない。(強いていれば思い当たることはありますが、それは後で述べます。)
筋トレとヨガで鍛えているせいかもしれません。筋トレで息があがることもありません。しかし、そのように私が訴えると、「それはあなたが悪い状況に慣れたからだ」と言われる。
それって本当ですか?
人はある状況に慣れていくと思いますが、限界はないでしょうか?
よくわからないことが多いため、このサイトでは、2023年5月以降のすべての肺X線画像を公開することにしました。
非結核性抗酸菌症の患者が急増しているため、市民公開講座なども開かれるようになっていますが、その内容は研究機関に在籍する医師たちの症例報告や研究成果報告であって、まだまだ市民=一般の人々向けではありません。私は他分野の研究者なので、私が受ける印象は絶対に正しいはずです。
この病気に罹患した市民は、患者を被検者にした研究結果を聞きたいわけではありません。自分の病気が改善すればよいのです。そのための医療上の方策や日常生活での諸注意を知りたいだけです。
今回の入院で、私は初めて抗生剤を投与されることになりました。肺マック症ならば即入院とはならないはずですが、肺アブセッサス症の私は、点滴による抗生剤投与の開始=入院だったのです。ただ、当初予定した入院期間(4週)の半分で退院し、残り2週は通院治療に切り替えました。2剤の点滴の場合、通常は入院で行うということですが、病院まで徒歩5分だったので通院に切り替えることができました。入院期間中、私が発する「入院はごめんだ!」というオーラに医師たちが折れたのかもしれません。特例だと言われました。
抗生剤は良く効きました。おそらく私のアブセッサス菌は、最も抗生剤が効くと言われているマシリエンゼという型だったからだと思います。
40年以上、同じ体重を維持するほどストイックで健康志向の私が、今後も抗生剤を飲み続けなければならない。常に食べ物にも気をつけてきた私が、身体の中の菌のバランスを壊す抗生剤=毒を長期間取らなければならない。これは私にとって無念なことです。
病院の呼吸器内科医たちは非結核性抗酸菌をやっつけることだけに関心を向ける一方、トータルな患者の健康は二の次です。彼らはたとえば抗生剤によって私の腸内環境がどうなるかを心配するのは自分の仕事とは考えていないと思います。実際、そこまで考えるとオーバーワークでしょう。だから、患者である私自身が守っていくしかない。そこに患者なりの医療リテラシーが不可欠であり、だから闘いなのです。
このサイトでは、非結核性抗酸菌症、特に私が罹患した肺アブセッサス症について患者目線で解説し、発症から2023年5月まで、肺炎にかかった2023年7月から入院した12月までの経過、入院時(12月19日~2024年1月1日)の状況、退院後の通院治療などについて、肺アブセッサス菌との今後の闘いについて私の思いを交えながらまとめていきます。
現在、患者・市民の「意思」を研究に取り入れること、患者・市民参画(Patient and Public Involvement)が注目されているそうです。医学研究・臨床試験プロセスの一環として、研究者が患者・市民の知見を参考にするという動きもあると聞きます。医師の方々も是非参考にしてください。そして、非結核性抗酸菌症に苦しむ患者さんたちが正しい情報を得るとともに、自身の病気について考えるきっかけとなれば幸いです。
2024年4月 Y.F.